第1回では、「高知県の最低賃金が1,086円になる」「まず全員の時給換算を点検する」ところまでお伝えしました。

第2回のテーマは、経営者の方がいちばん気になる点です。

「上げなきゃいけないのは分かる。でも、そのお金はどうする?」

答えはひとつではありませんが、国と高知県には、賃上げとセットで使える支援があります。
この記事では、どれを・どういう順番で見るかをやさしく整理します。

※助成額・要件・受付期間は予算や改正で変わります。申請前に労働局・県・最新パンフレットで確認してください。


まず結論:この3つを覚えればOK

優先度制度こんな会社向き
★★★業務改善助成金(国)設備やシステムを入れつつ、時給も上げたい
★★★高知県賃金向上環境整備事業費補助金(県)国の助成金などを使ったあと、賃上げ原資をさらに補いたい
★★☆キャリアアップ助成金(国)大きな設備投資はせず、賃金のルール(規程)を整えて上げたい

加えて、手元の現金が先に必要なときは、日本政策金融公庫の融資(働き方改革推進支援資金など)も選択肢です。
「もらえるお金(助成・補助)」と「借りるお金(融資)」は別物、と覚えておきましょう。


1.いちばん大事:業務改善助成金

どんな制度?

かんたんに言うと、次のセットが条件です。

  1. 会社の中でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を、50円以上上げる
  2. 同時に、仕事が速くなる・楽になる設備投資などをする
  3. その設備などにかかった費用の一部を、国が助成する

「賃上げの原資を直接くれる」制度ではなく、省力化・効率化の投資を助けることで、賃上げしやすい体質にする制度、とイメージすると分かりやすいです。

コースのイメージ

コース引上げ幅の目安
50円コース50円以上アップ
70円コース70円以上アップ
90円コース90円以上アップ

上げる人数や会社の状況によって、助成の上限は変わります。
一般的な上限のイメージは最大450万円、一定の特例に当てはまると最大600万円です。
助成率の目安は、事業場内最低賃金が1,050円未満なら費用の5分の4、それ以上なら4分の3です。

高知県の会社でのイメージ

  • いまの時給がだいたい1,023円前後
  • 秋以降は少なくとも1,086円が必要(+63円)
  • +63円なら、制度上は50円コースの土台には乗り得る(人数や対象者の数え方は要確認)

ここだけは絶対に守る(失敗しやすいポイント)

  1. 先に買わない・先に上げない
    交付決定の前に設備を発注したり、時給を上げてしまうと対象外になりやすいです。
    順番はいつも「申請 → 交付決定 → 実施」です。
  2. 受付は令和8年9月1日から
    高知県の発効が10月29日の場合、申請の期限は概ね発効日の前日(10月28日)まで(または11月30日の早い方)。
    窓口が混む前に動くのが安全です。
  3. 発効日の「当日」に上げると対象外になり得る
    地域別最低賃金への対応で上げる場合、発効日の前日までに上げ切るのが原則です。
  4. 対象になる人・ならないものがある
    例:週20時間以上の雇用保険加入者、など。
    一般的な乗用車や、原則としてPC・スマホは対象外(例外あり)。最新案内で確認を。
  5. 同じ事業所は年度内1回まで/予算がなくなれば早期終了

問い合わせ(高知県)

  • 高知労働局 雇用環境・均等室:088-885-6041
  • 業務改善助成金コールセンター:0120-366-440(平日9:00〜17:00)
  • 厚労省ページ:業務改善助成金

2.高知県の「上乗せ」:賃金向上環境整備事業費補助金

国の業務改善助成金などを使ったあと、賃上げの原資そのものを県が補ってくれる制度です。

項目内容(令和8年度の概要)
補助のイメージ対象従業員(雇用保険の被保険者)1人あたり 10万円
上限の目安1社あたり最大 1,000万円(指定補助金の自己負担額が上限)
申請の流れまず国などの指定補助金の交付決定 → そのあと県に申請
うれしい点指定補助金が業務改善助成金の場合、県の「賃上げ2%要件」は不問

専用サイト:https://kochi-chinginkojo.jp/

注意:予算には限りがある

令和8年8月下旬時点ですでに多くの申請が入っており、予算が埋まると受付終了します。
「国の交付決定が出たら、すぐに県も出す」くらいのスピード感が必要です。


3.設備はあまりいらない:キャリアアップ助成金

「新しい機械は買わないけど、パートさんの賃金ルールをきちんと上げたい」という場合に検討します。

  • 賃金規定等改定コース
    賃金の規程を改定し、一定の率以上で賃上げすると、1人あたり数万円程度の助成(引上げ率で変動。最新パンフで確認)
  • 労働時間を延ばして社会保険に入るコースなど
    最低賃金アップで「週20時間・月額8.8万円」のラインに近づく人と相性がよいことがあります

設備投資が前提の業務改善助成金と、役割を分けて使うイメージです。

参考:キャリアアップ助成金(厚労省)


かんたん診断:あなたはどれから?

Q1. この秋、機械・レジ・システムなどへの投資予定はある?
→ ある:業務改善助成金を最優先で検討
→ ない:キャリアアップ助成金や、価格転嫁(第3回)を中心に

Q2. 業務改善助成金(など指定補助金)の交付決定は取れそう?
→ 取れそう:続けて県の上乗せ補助金もカレンダーに入れる
→ まだ:まず労働局・社労士に「間に合うか」を相談

Q3. 人件費の増加分を、いまの利益だけで吸収できる?
→ 厳しい:第3回の価格転嫁が必須メニューになります


9月にやるべきこと(助成金編チェック)

  • 事業場内のいちばん低い時給と、上げたい幅を書き出す
  • 欲しい設備・システムの見積を取る(まだ発注しない)
  • 就業規則・賃金規程の改定案を用意する
  • 9月1日以降、労働局へ業務改善助成金の申請準備
  • 交付決定後すぐ、県の上乗せ補助金の必要書類を集める
  • 資金が先に必要なら、公庫の融資窓口にも相談する

第2回のまとめ

  1. 最賃対応の「味方」は、国の業務改善助成金と県の上乗せが二枚看板
  2. 業務改善助成金は「賃上げ+設備」のセット。交付決定前に動かない
  3. 設備が不要ならキャリアアップ助成金も選択肢
  4. 県の制度は予算消化が早いので、交付決定後はすぐ申請

次回予告
第3回は、「助成金だけでは埋まらない原資」をどう確保するか。
取引先への価格転嫁の話し方、現場を壊さない賃金設計、そして10月に重なる改正まで、一気に整理します。

本記事は掲載時点の制度に基づく内容です。制度は改正される場合があり、実際の取扱いは個別の状況により異なります。具体的な判断が必要な場合は、別途ご相談ください。