第1回では、「高知県の最低賃金が1,086円になる」「まず全員の時給換算を点検する」ところまでお伝えしました。
第2回のテーマは、経営者の方がいちばん気になる点です。
「上げなきゃいけないのは分かる。でも、そのお金はどうする?」
答えはひとつではありませんが、国と高知県には、賃上げとセットで使える支援があります。
この記事では、どれを・どういう順番で見るかをやさしく整理します。
- 第1回:【やさしい解説①】高知県の最低賃金が1,086円に!まず何をすればいい?
- 第2回(本記事):助成金・補助金の選び方
- 第3回:価格転嫁・賃金圧縮・10月に重なる改正
※助成額・要件・受付期間は予算や改正で変わります。申請前に労働局・県・最新パンフレットで確認してください。
まず結論:この3つを覚えればOK
| 優先度 | 制度 | こんな会社向き |
|---|---|---|
| ★★★ | 業務改善助成金(国) | 設備やシステムを入れつつ、時給も上げたい |
| ★★★ | 高知県賃金向上環境整備事業費補助金(県) | 国の助成金などを使ったあと、賃上げ原資をさらに補いたい |
| ★★☆ | キャリアアップ助成金(国) | 大きな設備投資はせず、賃金のルール(規程)を整えて上げたい |
加えて、手元の現金が先に必要なときは、日本政策金融公庫の融資(働き方改革推進支援資金など)も選択肢です。
「もらえるお金(助成・補助)」と「借りるお金(融資)」は別物、と覚えておきましょう。
1.いちばん大事:業務改善助成金
どんな制度?
かんたんに言うと、次のセットが条件です。
- 会社の中でいちばん低い時給(事業場内最低賃金)を、50円以上上げる
- 同時に、仕事が速くなる・楽になる設備投資などをする
- その設備などにかかった費用の一部を、国が助成する
「賃上げの原資を直接くれる」制度ではなく、省力化・効率化の投資を助けることで、賃上げしやすい体質にする制度、とイメージすると分かりやすいです。
コースのイメージ
| コース | 引上げ幅の目安 |
|---|---|
| 50円コース | 50円以上アップ |
| 70円コース | 70円以上アップ |
| 90円コース | 90円以上アップ |
上げる人数や会社の状況によって、助成の上限は変わります。
一般的な上限のイメージは最大450万円、一定の特例に当てはまると最大600万円です。
助成率の目安は、事業場内最低賃金が1,050円未満なら費用の5分の4、それ以上なら4分の3です。
高知県の会社でのイメージ
- いまの時給がだいたい1,023円前後
- 秋以降は少なくとも1,086円が必要(+63円)
- +63円なら、制度上は50円コースの土台には乗り得る(人数や対象者の数え方は要確認)
ここだけは絶対に守る(失敗しやすいポイント)
- 先に買わない・先に上げない
交付決定の前に設備を発注したり、時給を上げてしまうと対象外になりやすいです。
順番はいつも「申請 → 交付決定 → 実施」です。 - 受付は令和8年9月1日から
高知県の発効が10月29日の場合、申請の期限は概ね発効日の前日(10月28日)まで(または11月30日の早い方)。
窓口が混む前に動くのが安全です。 - 発効日の「当日」に上げると対象外になり得る
地域別最低賃金への対応で上げる場合、発効日の前日までに上げ切るのが原則です。 - 対象になる人・ならないものがある
例:週20時間以上の雇用保険加入者、など。
一般的な乗用車や、原則としてPC・スマホは対象外(例外あり)。最新案内で確認を。 - 同じ事業所は年度内1回まで/予算がなくなれば早期終了
問い合わせ(高知県)
- 高知労働局 雇用環境・均等室:088-885-6041
- 業務改善助成金コールセンター:0120-366-440(平日9:00〜17:00)
- 厚労省ページ:業務改善助成金
2.高知県の「上乗せ」:賃金向上環境整備事業費補助金
国の業務改善助成金などを使ったあと、賃上げの原資そのものを県が補ってくれる制度です。
| 項目 | 内容(令和8年度の概要) |
|---|---|
| 補助のイメージ | 対象従業員(雇用保険の被保険者)1人あたり 10万円 |
| 上限の目安 | 1社あたり最大 1,000万円(指定補助金の自己負担額が上限) |
| 申請の流れ | まず国などの指定補助金の交付決定 → そのあと県に申請 |
| うれしい点 | 指定補助金が業務改善助成金の場合、県の「賃上げ2%要件」は不問 |
専用サイト:https://kochi-chinginkojo.jp/
注意:予算には限りがある
令和8年8月下旬時点ですでに多くの申請が入っており、予算が埋まると受付終了します。
「国の交付決定が出たら、すぐに県も出す」くらいのスピード感が必要です。
3.設備はあまりいらない:キャリアアップ助成金
「新しい機械は買わないけど、パートさんの賃金ルールをきちんと上げたい」という場合に検討します。
- 賃金規定等改定コース
賃金の規程を改定し、一定の率以上で賃上げすると、1人あたり数万円程度の助成(引上げ率で変動。最新パンフで確認) - 労働時間を延ばして社会保険に入るコースなど
最低賃金アップで「週20時間・月額8.8万円」のラインに近づく人と相性がよいことがあります
設備投資が前提の業務改善助成金と、役割を分けて使うイメージです。
かんたん診断:あなたはどれから?
Q1. この秋、機械・レジ・システムなどへの投資予定はある?
→ ある:業務改善助成金を最優先で検討
→ ない:キャリアアップ助成金や、価格転嫁(第3回)を中心に
Q2. 業務改善助成金(など指定補助金)の交付決定は取れそう?
→ 取れそう:続けて県の上乗せ補助金もカレンダーに入れる
→ まだ:まず労働局・社労士に「間に合うか」を相談
Q3. 人件費の増加分を、いまの利益だけで吸収できる?
→ 厳しい:第3回の価格転嫁が必須メニューになります
9月にやるべきこと(助成金編チェック)
- 事業場内のいちばん低い時給と、上げたい幅を書き出す
- 欲しい設備・システムの見積を取る(まだ発注しない)
- 就業規則・賃金規程の改定案を用意する
- 9月1日以降、労働局へ業務改善助成金の申請準備
- 交付決定後すぐ、県の上乗せ補助金の必要書類を集める
- 資金が先に必要なら、公庫の融資窓口にも相談する
第2回のまとめ
- 最賃対応の「味方」は、国の業務改善助成金と県の上乗せが二枚看板
- 業務改善助成金は「賃上げ+設備」のセット。交付決定前に動かない
- 設備が不要ならキャリアアップ助成金も選択肢
- 県の制度は予算消化が早いので、交付決定後はすぐ申請
次回予告
第3回は、「助成金だけでは埋まらない原資」をどう確保するか。
取引先への価格転嫁の話し方、現場を壊さない賃金設計、そして10月に重なる改正まで、一気に整理します。