高知県の最低賃金が、令和8年(2026年)秋に過去2番目に高い63円の引き上げとなりました。
このシリーズでは、経営者・人事担当の方向けに、「何が変わるのか」「いつまでに何をするか」を3回に分けてやさしく解説します。

  • 第1回(本記事):最賃改定の中身と、まずやるべき点検
  • 第2回:使える助成金・補助金の選び方
  • 第3回:価格転嫁・賃金圧縮・10月に重なる改正への備え

※本稿の金額・発効日は、地方最低賃金審議会の答申を前提にしています。正式決定・官報公示後に確定します。申請や規程改定の前に、必ず最新情報をご確認ください。


今回のポイント(30秒でわかる)

項目内容
新しい最低賃金(答申)時給 1,086円
いまの金額1,023円
上がり幅+63円(約6.2%)
いつから?(予定)令和8年10月29日
だれに適用?県内で働く人すべて(正社員・パート・アルバイト・外国人も含む)

「うちは正社員だけ月給だから関係ない」は危険です。
月給でも、時間あたりに換算した賃金が1,086円を下回ると違反になります。


なぜ「63円」が重いのか?

63円という数字だけ見ると小さく感じるかもしれません。
しかしパート・アルバイトを多く雇う飲食・小売・介護・運送などでは、人件費が一気に押し上がる改定です。

さらに注意したいのが次の2点です。

  1. 罰則がある
    地域別最低賃金を下回ると、最低賃金法違反(50万円以下の罰金)の対象になり得ます。
  2. 新人だけ上げると現場が荒れる
    時給を最低ラインだけ上げると、長年働いているパートさんや若手正社員との差が縮まり、「頑張っても報われない」という不満(いわゆる賃金圧縮)が起きやすくなります。

つまり最低賃金対応は、「最賃割れを防ぐ作業」であると同時に、給与の設計そのものを見直す経営課題です。


経営対策は「4本の柱」で考える

難しいことを一度にやらなくて大丈夫です。次の4つに分けて考えましょう。

柱ひとことで言うと
① 法令対応10月29日以降、誰一人として最賃割れを出さない
② 原資確保人件費増を、価格や取引条件にきちんと反映する
③ 生産性向上設備やDXで「少ない人数でも回る」体質にする
④ 賃金制度新人とベテランの逆転を防ぎ、定着につなげる

第1回では、まず①と④のうち「点検」に絞ります。
②③の具体策(価格転嫁・助成金)は第2回・第3回で扱います。


いますぐやる!かんたん点検リスト

紙にチェックを付けながら進めてください。

ステップ1:全員の「時間あたり賃金」を出す

  • パート・アルバイトの時給一覧を出す
  • 月給者は「月給 ÷ 月の平均所定労働時間」で時間単価を出す
  • 1,086円未満になりそうな人に印をつける

ステップ2:「最低賃金に入れてはいけないお金」を混ぜない

最低賃金の計算では、次のようなものは含めません(代表例)。

  • 通勤手当
  • 家族手当・精皆勤手当
  • 賞与(ボーナス)
  • 時間外・休日・深夜の割増賃金

「手当を足せばクリア」と思い込むと、実は最賃割れ、というミスが起きやすいポイントです。

ステップ3:固定残業代も見直す

  • みなし残業・固定残業代の単価が、新最賃を下回っていないか再計算する

ステップ4:賃金圧縮がないか見る

  • 新人アルバイトの時給と、ベテランパート・若手正社員の水準を並べて比べる
  • 「新人だけ上がって、既存が据え置き」になっていないか確認する

※差がほぼなくなる場合は、既存の方の昇給や手当の見直しもセットで検討しましょう。


いつまでに何をする?(ざっくりスケジュール)

時期やること
いま〜9月上旬上記の点検/改定候補リスト作り/価格交渉の日程決め
9月助成金を使うなら申請の勝負月(詳細は第2回)
〜10月28日時給・月給の改定、就業規則・労働条件通知の更新
10月29日〜新最賃で給与計算。社保の加入ラインもあわせて確認

給与計算は、「10月28日までの働き分は旧額、29日以降は新額」が原則です。
手間を減らすなら、その月の最初から新額でそろえる方法でも問題ありません(会社の運用として説明できるようにしておきましょう)。


よくある疑問(第1回)

Q. 試用期間中や外国人にも適用されますか?
A. はい。原則すべての労働者に最低賃金が適用されます。「試用期間だから低くてよい」はありません。

Q. まだ「答申」なのに動いて大丈夫?
A. 点検や見積もりは今すぐ始めて大丈夫です。正式な金額・発効日は公示で確定しますが、例年、答申から大きく外れにくいため、待ってから一斉作業にすると間に合いません。

Q. 特定の業種だけ別の最低賃金があるのでは?
A. 高知県には特定最低賃金の枠組みがある業種もありますが、金額が地域別を下回っているため、実務上は地域別1,086円が基準になります。


第1回のまとめ

  1. 高知県の最低賃金は答申ベースで 1,086円(+63円)、適用は 10月29日予定
  2. まずやることは、全員の時間単価点検と、手当の取り違え防止
  3. 新人だけ上げると現場が揺れるので、賃金圧縮も同時に見る
  4. 助成金・県の上乗せ・価格転嫁は、第2回・第3回で具体的に解説

次回予告
第2回は、「上げるお金を少しでも軽くする」ための制度解説です。
業務改善助成金・キャリアアップ助成金・高知県の上乗せ補助金を、どれを選べばよいかが分かるように整理します。

→ 次回は【やさしい解説②】最低賃金アップの負担を軽くする!助成金・補助金の選び方(高知県・令和8年度)

本記事は掲載時点の制度に基づく内容です。制度は改正される場合があり、実際の取扱いは個別の状況により異なります。具体的な判断が必要な場合は、別途ご相談ください。