はじめに
令和8年10月7日、帝国データバンクが「人手不足倒産の動向調査(2026年度上半期)」を発表しました。従業員の退職や採用難、人件費の高騰などを原因とする倒産が、半年間で225件にのぼったとされています。
「人が足りない」という悩みは、いまや会社の存続そのものに関わる問題になっています。調査の内容と、中小企業が今できる対策を整理します。
調査の概要
集計期間は2026年4月から9月まで、負債1,000万円以上の法的整理が対象です。
| 項目 | 2026年度上半期 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 人手不足倒産(全体) | 225件 | 214件 |
| うち建設業 | 70件 | 53件 |
| うちサービス業 | 63件 | 57件 |
上半期としては、集計を始めた2013年以降で4年連続の過去最多とされています。建設業では職人不足が慢性化しているほか、サービス業のうち受託開発ソフトウェア業も8件(前年同期比6件増)と増えています。
事例としては、社員の独立や資格を持つ社員の退職が重なって営業が難しくなった屋根工事業者や、人件費の高騰で資金繰りが苦しくなったケースが紹介されています。
実務上の影響
ポイントは、「採用できない」だけでなく「辞められる」ことで経営が立ち行かなくなるケースがあることです。とくに建設業では、施工管理技士など有資格者が一人抜けるだけで、受注や許可要件に影響が出ることがあります。
※建設業許可では、営業所ごとに専任技術者などを置く必要があります。資格者の退職で要件を満たさなくなると、許可の維持に関わるため注意が必要です。
一方で、令和8年度の最低賃金は全国加重平均で1,177円(前年度比56円増)とされ、人件費の上昇は今後も続く見込みです。「賃上げしたいが原資がない」という状況に陥らないよう、計画的な対応が求められます。
また、ソフトウェア開発のように高度な人材の獲得競争が激しい業種では、採用や育成に資金を回せないまま、AIやノーコードツールの台頭に対応しきれなかった事例も紹介されています。人手不足は、地域や業種を問わず起こりうる経営課題だといえます。
今すべきこと
すぐに取り組めることとして、次の3点をおすすめします。
- 退職リスクの把握:有資格者やベテランなど「抜けると困る人」をリストアップし、面談で不満や今後の希望を聞いておく
- 処遇の見える化:昇給のルールや評価の基準を文書にし、「頑張れば上がる」ことを伝える
- 助成金の活用:賃上げや正社員化、職場環境の改善に使える助成金(業務改善助成金、キャリアアップ助成金など)で、負担を軽くする
※助成金は、原則として取組みの前に計画の届出などが必要なものが多くあります。実施してから申請しようとしても対象外になる場合があるため、事前の確認が大切です。
まとめ
人手不足倒産の増加は、「人を大切にする会社が生き残る」時代に入ったことを示しています。採用より先に、まずは今いる社員が辞めない仕組みづくりから始めてみませんか。たけうち事務所では、就業規則・賃金制度の整備や助成金の活用、建設業許可の維持についてのご相談をお受けしています。