はじめに
2026年9月11日、年金制度改正法の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第275号)が公布され、短時間労働者の社会保険加入要件のうち「賃金要件」を撤廃する日が、2026年(令和8年)10月1日と決まりました。いわゆる「106万円の壁」がなくなる改正です。施行まで残りわずかですので、対象となりそうな事業所は急いで確認をお願いします。
何が変わるのか
パート・アルバイトの方が健康保険・厚生年金保険に加入する要件は、次のように変わります。
| 項目 | 2026年9月30日まで | 2026年10月1日から |
|---|---|---|
| 企業規模 | 従業員51人超(特定適用事業所) | 変更なし |
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 | 変更なし |
| 賃金 | 所定内賃金が月額8.8万円以上 | 要件なし(撤廃) |
| 雇用期間 | 2か月を超える見込み | 変更なし |
| 学生 | 学生でないこと | 変更なし |
つまり10月以降、従業員51人超の事業所では「週20時間以上働くかどうか」が加入の分かれ目になります。時給がいくらかではなく、労働時間で決まるということです。
あわせて、最低賃金の減額特例の対象となっている方が健康保険・厚生年金保険に任意で加入できる制度も、2026年10月に始まるとされています。
実務上の影響
※賃金要件の撤廃が適用されるのは、従業員51人超の「特定適用事業所」です。50人以下の事業所は、労使合意による任意特定適用事業所になっていない限り、10月1日時点での変更はありません。
ただし、企業規模要件は今後10年程度をかけて段階的に引き下げられる予定で、2027年10月には「36人超」になるとされています。今回は対象外でも、数年のうちに順番が回ってきます。
また、これまで「月8.8万円未満に抑える」形で就業調整をしていた方は、その調整に意味がなくなります。10月以降の勤務希望を早めに聞いておかないと、シフトが組めなくなるおそれがあります。
事業主にとっては、社会保険料の負担増が直接響きます。仮に月額8万円で働く方が新たに加入した場合、健康保険と厚生年金保険を合わせた事業主負担はおおむね月1万円台の規模になります。該当者が10人いれば年間で100万円を超える計算です(※保険料率は都道府県・年度で異なります。実際の金額は必ず最新の料率表でご確認ください)。人数の把握を後回しにすると、10月以降の資金繰りに影響しかねません。
従業員側の受け止めも見逃せません。保険料が給与から引かれるため、目先の手取りは減ります。一方で、将来受け取る老齢厚生年金が増え、傷病手当金や出産手当金といった健康保険の給付も受けられるようになります。ここを説明せずに給与明細だけが変わると、不信感につながります。逆に、加入を避けようとして週20時間未満に勤務時間を減らす方が出てくると、人手が足りなくなる事業所も出てくるでしょう。
今すべきこと
- 週20時間以上で月額8.8万円未満の方を洗い出す
- 該当者に「10月から加入になる」ことを説明する(手取りと将来の年金が変わります)
- 増える社会保険料の事業主負担を人件費計画に織り込む
- 50人以下の事業所も、従業員数の推移と2027年10月の「36人超」を頭に入れておく
まとめ
10月1日はもう目の前です。まずは対象者の洗い出しから着手してください。加入手続きや本人への説明の進め方でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
出典
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大(日本年金機構・2026年9月16日更新)
- 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(日本年金機構)
- 社会保険の加入対象の拡大について(厚生労働省)