【令和9年1月スタート】療養・育児・介護のときに社会保険料をすぐ下げられる新しい仕組み

■ ひとことで言うと

病気の治療・子育て・家族の介護のために勤務時間を減らした社員について、社会保険料を「翌月から」下げられるようになります。

社会保険料は、月ごとの給与ではなく「標準報酬月額」という過去に決めた金額のランクをもとに計算されます。そのため、勤務時間を減らして給与が下がっても、保険料はしばらく高いまま。手取りが大きく減り、「もう続けられない」と退職につながるケースがありました。この時間差を解消するのが今回の制度です。

■ これまでと、どう変わる?

これまで(随時改定)令和9年1月からの特例
保険料が下がる時期給与が下がって4か月目から給与が下がった月の翌月から
必要な実績下がったあと3か月分の平均下がった初月の1か月分だけ
きっかけ基本給などの変更が必要残業を減らしただけでもOK

つまり「3か月待ち」が「1か月」に短縮されます。

■ 対象になる人・ケース

一般の社員のほか、70歳以上の在職者、法人の役員も対象です。

  • 療養 … 本人の病気やケガの治療。家族の看病も含みます
  • 育児 … 小学校に上がる前のお子さんの子育て
  • 介護 … 要介護・要支援の認定を受けたご家族の介護

■ 使うための条件(すべて満たす必要があります)

  1. 勤務時間を減らしている … 仕事と両立するため、労使で合意のうえ時短や残業削減をしていること
  2. 給与ランクが2段階以上下がる … 下がった状態が3か月以上続く見込みであること
  3. 本人が書面で同意している … デメリット(下記)を理解したうえでの署名・押印が必須です

注意点

  • 給与が下がった月を含めて、その会社での加入期間が3か月未満の人は対象外です(入社直後など)。
  • 1日も出勤せず給与がまったく出なかった月は、スタート月にできません。「働きながら両立している」ことが前提だからです。
  • 逆に、出勤しない日があっても所定労働日数が変わっていなければ、その日も出勤日として数えられます(欠勤があっても使えるということです)。

■ 社員に必ず伝えるべき「デメリット」

保険料が下がるということは、将来もらえるお金も下がるということです。ここを説明せずに手続きすると、後々のトラブルになりかねません。

メリット(今すぐ)デメリット(将来)
毎月の社会保険料が早く安くなる老齢厚生年金の受取額が減る
高額療養費の自己負担限度額が下がる可能性がある傷病手当金・出産手当金の額が減る

ポイント: 両方を並べた説明書を用意し、本人に選んでもらう形にしてください。「会社が勝手に下げた」と言われない備えになります。

■ 特に注意したいケース

  • 70歳以上の在職者 … 報酬が下がると、在職老齢年金の支給停止が緩み、年金の受取額が増えることがあります。働き続けてもらううえで有利に働く場合があります。
  • 法人役員 … 社会保険で認められても、税務上は「役員報酬の減額に正当な理由があるか」が別途問われます。必ず事前に顧問税理士へご相談ください。

■ 会社側の実務の流れ

  1. 説明と同意 … デメリットを含めた「申立書兼同意書」を作り、本人から取得する
  2. 届出 … 「被保険者報酬月額変更届(特例改定用)」に同意書を添えて年金事務所へ提出
  3. 証拠書類の保管 … 診断書、出勤簿、賃金台帳、介護認定証などを届出日から2年間保存
  4. 元に戻ったときの手続き … 勤務が元に戻って給与ランクが2段階以上上がったら、速やかに増額の届出が必要です(忘れやすいので要注意)

■ 今から準備しておきたいこと

  • 短時間勤務など、時短に関する就業規則の整備
  • 病気・育児・介護が起きたとき、人事にすぐ相談が上がる窓口づくり
  • 診断書など機密性の高い書類の保管ルールの確認

制度開始は令和9年(2027年)1月1日です。 施行までに社内ルールと様式を整えておけば、いざというときに慌てず、社員の生活を守りながら人材の流出を防ぐことができます。ご準備のご相談はお気軽にお声がけください。

本記事は掲載時点の制度に基づく内容です。制度は改正される場合があり、実際の取扱いは個別の状況により異なります。具体的な判断が必要な場合は、別途ご相談ください。